連載インタビュー 第3回 坪田康佑さん
-「私と看護」 -  


2014年2月15日、公式の団体として初めて男性看護師のための「日本男性看護師会」の発起会が行われました。その発起会の発起人を務めるのが坪田康佑(こうすけ)さん。看護師、保健師の資格をお持ちで、無医地区に医療の提供とコミュニティの場をつくることを目的とする「一般社団法人 医療振興会(どこでもクリニック)」という団体の理事も務め、社会や医療の現場でご活躍されています。今回は、男性看護師の増加がニュースとしても取り上げられている昨今、今後の看護師不足を担うためにも活躍が期待される男性看護師をメインテーマとしたロジカルなお考えと、情熱的なお気持ちを赤裸々に語っていただきました。

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男性看護師について

男性の看護師が徐々に増加傾向(資格保持者は2004年31,594人⇒2012年63,148人)にある背景をどのようにお考えでしょうか?

大きく分けて2つ理由があると思います。

1つ目の理由は、存在を知られていなかった男性看護師が、ナースマン、ER 救急救命室などのドラマなどメディアを通じて認知されるようになったことです。小学生が目指せるぐらいイメージが付く職業に男性看護師がなったということです。

2つめの理由は、大学の数が増えたことから、高等学校の進路指導の先生や親が、看護師を進路先として進めやすくなったことです。2013年度では看護科がある大学が228あり、全大学の3分の1に看護科がある状況になりました。また、進路には親の意見も大きく関与します。親が祖父、祖母の介護をするようになり、在宅における介護・看護のことが話題になることで潜在的にも看護師の存在を知る様になったと思います。新しく資格を取る人がそういった背景をもとに増えてきたと言えるでしょう。大学への進学の際に、卒業後の職業を見越した受験を考える現状では、経済学部ではイメージが難しいですが、一方で、看護師はイメージがしやすい。結果として進路の選択肢の1つとして看護科のある大学へ進む男性が増えているのだと思います。

今年は看護学科がある4年制の大学が18大学増えました。過去最大の増加です。男女合わせた全体から見ると男性看護大学生の在籍する割合は現在約10%。就業者全体での男性看護師の割合は6%です。必然、男性看護師が今後も増えていくでしょう。

坪田さんがこの度、日本男性看護師会を発足された経緯を教えてください。

私が男性の看護学生だった時代からはじまります。当時、私は男性看護学生の集うメーリングリストをつくっていました。そこでは他校の男性看護学生に「おまえの学校、男は何人いる?」とか「先輩の就業先はどこ?」など情報交換ができる場でした。男性看護師が今以上にマイノリティの時代だったので、そういった場があることが楽しかったですし、居心地が良かったです。そこでの情報のおかげで、病院実習で、更衣室が男性だけ会議室だったり、物置だったり、学校では疎外感を感じていたことが、他の学校でも同じ状況だときくだけで、勝手に卑屈になっていただけだと自分をみつめることができ実習に対する心構えがかわりました。コーチングファームに勤めていた私が、改めて医療業界に戻ろうとした際に、男性看護師の情報交換をする場がありませんでした。当時の情報交換を思い出し、男性看護師が集うディスカッションの場としてFacebookページを作ったところ、たった7時間で77人の看護師が集まりました。また、それを見た女性看護師からも、参加希望や応援の言葉をいただくようになりました。これは結構面白いな、と。 そして、ディスカッションをする中で、男性看護師が男性看護師の今後の研究のために使う生の情報がやりとりされる場所になったのです。折角、情報がやりとりされる場になったので、その情報を集めて研究などができないか?と考えはじめました。当時から男性看護師の研究に利用するデータはありましたが、男性看護師向けのものではなく、病院のためのデータばかりでした。その為に男性看護師向けの現状と未来を調べるためのデータを取りたいと必然的に思うようになりました。


そこで、簡単なアンケートを元に日本看護管理学会でインフォメーションエクスチェンジをさせて頂きました。驚いたことに参加した看護師の6割がなんと女性でした。女性の看護部長の方々からも「男性看護師の指導方法がわからない」「配置に関して悩む」など色々なご意見が上がり、男性看護師の集まりや情報が集まる場所があることは、重要であるとお言葉を頂きました。そこで、WEB上の集まりから組織化を本格的に意識しはじめました。

また、組織化に関しては、Facebook上でも何度も話題にあがっており、一番最初のディスカッションが、名古屋の藤野泰平さんによる「社会統計学上、やる気と行動力のある人は全体の1%と言われているので65000人の資格保持者がいれば、650人。650人集めましょう!」とコメントでした。経緯は定かではありませんが、650人で組織化するために、300人集まったら組織化の活動をしようという話になり、管理学会のタイミングでその数がすぐに集まりました。今では500名を超える登録数となっています。

そのような活動を通して、組織の発足に向けて力をいれて準備を進めようと思いました。その一方で、「愚痴しか出ないような、発展性のない組織になる危険性があれば辞めよう」とも思っていましたが、幸いなことに発起会ではポジティブな意見が多数あり正式に組織化することになりました。発起会当日は、2014年2月15日記録的な雪の影響で交通網が麻痺しているエリアも多かったにも関わらず、全国から40数名も来ていただきました。

発起会は、国際看護師協会 副会長の金井Pak様、日本看護連盟の副会長だった大島様、参議院議員の石田まさひろ先生、米国看護協会の看護師からのメッセージから、二部構成で行わられ、一部はシンポジウム形式で、男性看護師の多様なキャリアということで、4種類のキャリアとして、東京大学病院の副看護部長の小林さん、東北大学病院の認定看護師の上溝さん、訪問看護ステーション経営者の藤野さん、社会企業家の私が登壇しました。二部は、ラーニングバー形式で男性看護師の可能性を考えました。



Q.日本男性看護師会の今後の活動についてご紹介いただけますか?

患者さんへの活動、病院への活動、我々男性看護師への活動の3つの軸があります。

まず、患者さんへの活動ですが、看護師の重要な仕事として「療養上の世話」があります。そこには、「男性」にケアされたいという隠れたニーズがあります。男性看護師の認知をあげ、男性を選択できる環境をつくっていきたいと思います。具体的には、産婦人科医療で、男性メインの医師の中に、女性医師が認められるようになり、女性医師を患者さんが選ぶようになってきたようなことが行われるようになる。特に在宅医療や認知症患者さんへのケアでそのニーズが開かれていくと考えています。

病院への活動としては、病院にいる男性看護師の数によって、男性看護師の離職率は変わってくるのではないかと考えています。離職の原因が、男性看護師1人だけの職場であった事例もありました。というのも、看護の現場では女性看護師と同じ失敗をした際に「男だからね」という理由で咎められることがあります。それはスキルではなく、自尊心否定であり、個人ではどうにもならない理由です。「存在否定」につながることですし、いじめに似た言葉です。これでは萎縮してしまい、失敗の負の循環がうまれる可能性が高いです。看護の現場に失敗が許されるべきことではないですが、人はヒヤリハットをして成長していくものだと思います。女性の看護師の場合、更衣室で泣いていると先輩や同期から一声差し伸べる環境が多くあります。マイノリティである男性の看護師社会でも「ちょっと一杯飲んでいかないか?」みたいな職場外でのコミュニケーションがとれる職場環境であると離職を留まったということを耳にします。職場外でのコミュニケーションが実は、堅実な職場内環境を作るというハーバード大学の研究もあります。

看護職の離職を減らすためにも、男性看護学生には就職前に、注意してもらいたい。今後は男性看護師による、男性看護学生に向けた病院説明会なども実施する予定です。就職活動の際に得られる情報も量や内容はやはり男性看護師を対象としたものは少ないです。就業先を探している男性看護師がこの病院には男性が何人いる、といったデータが見られると良いですよね。他には、先輩男性看護師に話を伺うと、加齢臭や臭いに気をつけているが、最近の男性看護師はその配慮が少なく、仮眠室で使用した枕に関してクレームの話なども耳にしますので、そのような情報をまとめた男性看護師のためのガイドラインも作っていきたいと思います。

やりたいことはたくさんありますが、一歩目としてはマイノリティである男性の看護学生や看護師でも、ちょっとしたオフのタイミングでのコミュニケーションの機会があると救われるもので、そういった言語化できないことを理解し分かち合える場所を作っていきたいと思います。そういったメリットをこの会の男性看護師達は感じてくれていると思います。


Q.男性の職業選択の1つとして看護師が今よりも注目され、男性看護師が活躍していくにはどのようなことが必要でしょうか。

私達もまだ、明確な答えはわかりません。ですが、特に男性看護師に向けた今までにデータ化されていない、表面化されていないものを集め、皆でディスカッションする場を作ることで、男性看護師が活躍できる環境をつくる方法が導きだせると考えています。

先日、埼玉県の男性看護師連盟の男性看護師研修に参加させていただきました。「あと30年、男性看護師が活躍していくには何が必要か」というテーマでディスカッションを行いました。その中で個人の回答で一番多かったことは、男性看護師の数の問題でした。グループの回答で一番多かったことはキャリアステップの相談でした。そういった現場の意見と、表面化されないデータを集め分析していくことで男性看護師が持つ今後の課題、活躍できる場づくりの方法がわかってくると思います。


どこでもクリニックについて

Q.どこでもクリニックを発足された経緯を教えてください。

今は国民皆保険で、皆さん医療費を支払っていますが、医療費を支払っているのに医療の利用が困難な方々がいることが、違和感のきっかけでした。例えば、住んでいる周りに医療機関がなく、タクシーで1時間かけて行かなければいけない地域の人達もいらっしゃいます。これは不平等ではないかと考えていました。

東日本大震災の時に私の父が、アメリカからバンの中で眼科の治療ができるという画期的な車を借りてきました。(http://www.mediproduce.jp/mvv/)震災時に被災者の皆様が困ったことの1つに、メガネ、コンタクトレンズが利用できなくなるなど、眼のことが問題となりました。なぜアメリカから借りたのかというと、アメリカはハリケーンカトリーナの被災の経験があり、移動式の治療ができる車などの設備をその際に作成していたのですね。

そういった父の行動をみて、私は有事の際に移動式の治療ができる車であり、平時には地域医療に巡回診療(公民館など集会所で定期的に限定的に開かれる医療機関)できる車があれば良いなと思いました。また、運命的にも、同じ時期に熱い信頼できる仲間である医師が、医療機関から医師が出ていくことで、国民への医療提供ができる。運命的にも、似た巡回診療を考えていたことがきっかけです。 医療機関から出て行くことでは、在宅医療が話題にあがっていますが、在宅での医療ですと家の中で、医療従事者と家族だけのつながりになってしまい、近隣の人との接点が無く、コミュニティが崩壊していく危険性を感じました。それらの解決手段として、どこでもクリニックという治療の提供とコミュニティづくりの両軸を意識した挑戦が始まりました。

コミュニティの場をつくるということに関連しますが、高齢者の方が気軽に集える場所にすることで安定期の患者さんの治療だけでなく、独居老人の方々の安否確認、コミュニティ内の会話による認知症の予防にも繋がります。「どこでもクリニックが来たから外に出て行こう」と思い行動してくれるようにしたいです。

どこでもクリニックの今後の活動についてご紹介いただけますか?

活動をしていてわかったことですが、介護保険でも同じ状況がうまれていること。介護保険を払っているにも関わらず、介護サービスが限定されています。私が現在どこでもクリニックで活動している場所は、町の人口は24000人ですが、訪問看護ステーションが0です。どこでもクリニックにて、眼科などの診療科目を増やす挑戦もしていく予定ですが、まず私達はこの半年間で、訪問看護部をつくり、訪問看護ステーションとして看護師が独立活動できる組織にしてきます。


医療について

Q.看護師が「特定行為」を行うことについてどのようにお考えでしょうか?

医師がいない、少ない地域で、特定行為を看護師が行うことは必要だと体感しています。現在医者の数が足りない現状を考えますと、医師が行う医療行為を代替として行えるスタッフ、職種が必要となりますし、看護師が部分的に担うことは必要でしょう。

また病院の外来では医師は平均して1日60~100人の患者を診察できると言われています。それが在宅になると、1日約10人の患者となります。在宅へ移行する現在の流れをみると、医師不足は加速化すると考えられます。看護師でなくても、医師の医療行為を代行できことが認められることで、医師への負担はより平準化、効率化されると考えています。

Q.2014年度の診療報酬改定の意図、今後の影響についてどのようにお考えでしょうか?

高齢社会が進む中、医療・介護の財源が膨らんでいくことは明白ですので、今後も診療報酬改定による財源の圧縮、最適化が行われていきます。DPC(包括医療費支払い制度)により、退院日数が減ったことで、看護師一人あたりの患者数に数値的に変化はありませんが、新しい患者さんの情報収集業務が増加してきて、さらに忙しさは増していく中で、現在も進んでいるチーム医療にもあるように業務の分担、効率化が必須となると思います。

今後の働き方が変わってくる中で、看護師に特定して申し上げますと、看護師は「病棟のスペシャリスト」であり「患者のスペシャリスト」です。そして今後はもう1つの「連携に対するスペシャリスト」が必要だと考えています。例えば「退院調整ナース」や「感染症予防ナース」など病棟間、病院から在宅への調整ができるスキルです。


最後に

Q.4月から新しい環境で活躍する新卒の看護師さんへ、応援メッセージをいただけますでしょうか?

看護師として医療の現場に従事される方は、看護観や社会に対する役割について考えをお持ちの方が多く、論理的に解決できないことに対しても一生懸命解決に向けて努力をされます。最初は覚えることも、叱られることも、患者さんのことで色々悩むことも多くあると思います。

私の友人にも大変な苦労をした仲間がいましたので、なんとかその現状を解決したいと思う気持ちが、現在の私の様々な活動の根底にあります。皆さんあまり無理をし過ぎず、ご自身に対して看護が必要になってしまわないようにしてください。周りにはそういった苦労を分かち合える同僚や、先輩もいらっしゃると思います。もし、そういった場がなくとも、私達のような団体に参加したり、セミナーに参加したりするなど職場の外でも解決できる悩みが多くあります。私達もそういった場所を提供し、広げてゆきたいと考えています。何事も1人で悩まず、抱え込まないように、がんばってください。


坪田康佑さん プロフィール --------------------------------------------

慶應義塾大学看護医療学部2005年卒。米国NY州Canisius College MBA Program修了。保有資格は看護師・保健師・養護教諭2種・MBAと多岐にわたる。大学在学中から、医療の多職種連携・コラボレーションの可能性を感じ、医療・福祉系学生を集めた企画運営に携わる。代表的なものとして、「日本男性看護師会」「日本看護学生会」(「大学」「専門学校」など多様な教育背景がある看護資格が、お互いの教育背景を尊重できるように、日本全国の看護学生の交流の場)の設立・企画。現在は一般社団法人 医療振興会の「どこでもクリニック」にて無医地区への医療提供やコミュニティの場を提供すべく、栃木県芳賀郡益子町などその活動範囲を全国へと広げている

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▼日本男性看護師会
男性看護師の可能性をより広げることによって、医療・介護における問題解決に助力する。日本男性看護師会の公式サイトです。
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▼一般社団法人 医療振興会 どこでもクリニック
「医療と生活の距離を縮める」をコンセプトに移動型クリニックを地域で走らせるべく活動しています。 その第一歩として最も医療が遠い地域(無医地区、へき地、過疎地)に足りない医療を提供していくプロジェクトです。
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